1ヶ月間 準備してきた学園祭が、いよいよ明日スタートする。



「旬ちゃんっ。 高校最後のいい思い出になるといいねっ」



マーくんを見送ったあと、斜め向かいの家に入ろうとしていた旬ちゃんに声をかける。

玄関の明かりが照らし出した旬ちゃんは、私を見てニコッと笑った。



「ミサも、最後の学園祭 楽しめよっ」

「え、私は来年もあるよ?」

「5人が一緒なのは今年で最後だろ? だから、とにかく楽しめよ」



ひらひらと手を振り、旬ちゃんは家の中に入っていった。






「……そっか。 5人一緒なのは、今年で最後なんだ」



旬ちゃんの言葉で、今更それを思い出した。


高校を卒業したあとでも、学園祭に来ることは出来る。

でも『一緒に作った学園祭』は今年が最後なんだ。


みんなそれぞれ担当は違うけど、同じ学校の学園祭を作ってきたのは事実。

……旬ちゃんと晃太くんが卒業したら、もう5人では作れないんだ。



「なんだよ、もぉ……寂しくなるじゃんっ」



もう家に入ってしまった旬ちゃんを思いながら、小さく言葉を放つ。



「……旬ちゃんも、ちゃんと楽しんでね?」



その言葉は旬ちゃんには届いてないけれど……それでも私は、旬ちゃんの家を見続けたまま言葉を繋げていった。



「一緒に、最高の学園祭にしようね」



旬ちゃんの部屋の明かりがついたのを確認したあと、小さな笑みを浮かべてから私も家の中に入った。