父が生きていたのなら……。
途方もないこの悪夢はなかったのかもしれない。
そう思っても、今更どうしようもない。

13歳の夏、父は他界した。
突然で呆気ない命の終焉。
それは今までの日常にほころびを生じさせた。
母は父の死というもので簡単に狂い、“母”を捨て、“女”に戻った。
「お母さん……」
そう呼べば、泣き叫び殴ってきた。