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その後、晃太くん、歩夢、マーくんはそれぞれ帰宅していった。

残っているのは、私の家の斜め向かいに住んでいる旬ちゃん。


他のみんなの家から私の家までは数分かかるけど、旬ちゃんの家までは30秒あれば余裕で着く。

その距離だからこそ、旬ちゃんは毎朝 私を起こしに来てくれるのだ。



自分の部屋のベッドの上でゴロゴロしてる私と、その近くで携帯をいじってる旬ちゃん。

お互いの視線が合うことはなかったけれど、その状態のまま私たちは話をしていた。



「でもビックリしたなぁ。 旬ちゃん、世界一周なんて考えてたんだね」

「いつ行けるかはわかんねーけどな。 でも絶対行くよ。 色んなところに行って、色々勉強したいんだ」

「へぇー……英語の苦手な旬ちゃんが、外国ねぇ……」


「それは、まぁ……20年くらい経てば自動翻訳機とか発達してんじゃね? うん、だから大丈夫なはずだ」

「自分で喋る気はないんだ?」

「ない」



あはは、言い切っちゃった。

でも そういう馬鹿なところが旬ちゃんらしいと思う。



「旬ちゃんって、なんかいいよね」

「んー?」

「真っ直ぐなところとか、なんかカッコイイよ。 馬鹿だけど」


「……馬鹿は余計だっつーの。 ていうかカッコイイってのも違うだろ。 俺はただの馬鹿だぞ?」

「馬鹿なのか馬鹿じゃないのかどっちかにしなよ」



そんなことを言ってる時に視線が重なり、私たちは笑い合う。


そしてふと会話が止まった時。

旬ちゃんが、私の髪を優しく撫でた。