「っっ、恵里……奈…」


私達の間に今までにない緊張が走る。


身体中が心臓なんじゃないかと思うぐらい胸が波を打ち、息をするのもやっと。

先輩は私を見つめたまま、何か葛藤するように下唇を噛んでいる。


わかってる。
先輩もこれ以上踏み込んだらいけないって、頭の中で必死に言い聞かせてるんだ。


でも、私はもうーーー…




「先輩…私を、見て?」


私だけを見てほしい。

他の女じゃなく、私を…



先輩が逃げられないように、瞬きもせずに見つめたまま少しずつ距離を縮める。

頬に触れた手で先輩の顔を引き寄せながら。



もう、止まれない…



目と鼻の先にある先輩の顔。

あとほんの数センチで、私と先輩の関係が変わる。



ーーーー先輩との初めてのキスは、珈琲の苦い味がした。