『商品』の俺らの中には、本当に買われるやつもいた。



国崎メイ。



緑っぽい髪をいつも2つに束ねた、ちょっと大人しめの女の子。




『お兄ちゃん、メイね、売られるんだって』




メイはいつも俺をそう呼ぶ。


鳳紀という血族がいた千晶が羨ましかったらしく、たまたま1歳年上の俺を勝手にお兄ちゃんにした。


本人いわく

『お兄ちゃんと同い年の千晶には、鳳紀くんがいるでしょ?


だからお姉ちゃんにはなれない。

でも、お兄ちゃんにはお兄ちゃんがいないから』



だかららしい。


全くわからない。



でもさ、


『お兄ちゃん、メイね、売られるんだって』


確かに覚えてるんだ。


『でもね』


俺らの手から飛び去った小鳥を。


『大丈夫だよ』


声の高さ、頬の感触、髪の手触り。


『メイはどこでも幸せになれる』


10歳で止まったままの、メイの笑顔。




『安心して、お兄ちゃん。

メイは幸せになってみせるよ』




泣かずにさよならした、強い強いメイを。