「あたしはね、背筋を触られるのが一番きらいなの!」

「知らないよ」

「別にこそばゆいわけじゃないけど!嫌いなの!」

「美緒ちゃんが私の弱点を心得てるだなんて脅すからー」

「あたしのこれは弱点なんかじゃないもん!!」



必死か。

はいはい、と笑って返しながら、ぷりぷりと怒っている美緒ちゃんを気付かれないように観察する。

美緒ちゃんの存在を忘れてしまっていた、あの一瞬。

けれど美緒ちゃんには、何も気付かれていない様子。良かった。


きっと、実際の時間にしてみれば一瞬だった。

だけど私には、とてもあの時間が長く感じられたから。


諦めていた気持ちが、ふと沸き起こった小さな期待に、はじけそうになtって。

けれど、両隣を歩いていた綺麗にお化粧をした女の子たちがふと頭をよぎって、慌てて気持ちを抑え込んだ。


…駄目だよ。

私には、とても、遠い人。