「私は布留に死なないでほしいな」
そんな可愛らしいことを呟く。
「どんなに辛い人生でも、楽しいことがきっとあるし。
ほれ、腕出せ」
絆創膏をベリッと剥がすと、ぶわ…と血がどくどく溢れてきた。
絆創膏に血が貯まってたらしい。
「…血が止まってから絆創膏貼れよ」
「すみません」
――『はい、いいよ』
そう言われて解放された俺は、生きてることを確認。
同時に時間も確認。
『ヤバイよ千晶!遅刻遅刻!』
『え?あー!』
バタバタしてたので、絆創膏を乱暴に貼っただけで来たのだ。
「てかさー
一緒に寮生活、もうやめたら?」
「嫌」
「先生としては、生徒をみすみす死の危険があるところに置いておきたくないんだけど。
しかも男女一緒って、健全に暮らしてるー?」
「別にやらしいことしてねーよ」
「あんた男でしょー。
菅原が心配…」
「大丈夫ですって」
一緒の寮で生活して約2年。
一回もそんな仲になったことはないし、そんな気持ちになったこともない。
兄弟以上恋人未満。
そんな関係。
でも互いに欠けては暮らせない。
そのことを学校側と俺らの両親はわかってくれた。
だから男女でも寮が一緒で生活できる。
この学校の寮は広いけど、さすがに二人で暮らすには不便があるだろう…と、実費で壁をぶち壊してドアをつけ、一つの部屋にした先生。
それがこいつ、山本先生。