…と、いうわけで。

朝のHRが終わったと同時に一階の保健室へ。



「失礼しまーす」



ガラガラと横開きのドアを開ける。

独特の薬品の匂い。

奥には清潔感漂う白いベッドに白いカーテン。

薬品棚と文机。

文机には砂糖水というアンビリーバボーな選択肢の飲み物を飲みながら、書き物をしてる先生がいた。

薬品の匂いに鼻をしかめてると、山本先生が話しかけてくる。


「おー、布留」


布留陽杞は、俺の名前だ。


部屋の奥にいくと、白衣の女。


「山本先生」


優雅に朝活を楽しんでいる妖艶な中年女性が、ケラケラ笑う。


「なんだー布留ー。
また殺られたの?」

「殺られた」

「どこ?」

「右腕」

「見せてみ」


机に向かってた先生が立ち上がって、俺の右腕をまくって診察する。


「あー…縫うまでじゃあないなー。
包帯巻いとくか」



薬品棚をごそごそまさぐりながるのを尻目にベッドに座る。

堅いベッドだ、相変わらず。


「布留はさー、菅原本当に好きだよね」

「…さあ?」

「日本語になってないし」

笑うと艶やかな黒髪が背中で揺れる。


「…いつか死ぬよ?」


先生の言うことは正しい。


「別にいいし」

間違ってるのは俺だ。


「…いいんだ」


ちなみに、俺は決して病んでる訳ではない。

病んでるのは向こう。


千晶の方だ。