戸惑っているキミ子の手を掴み、一度立ち止まらせた。
「言ってみ」
俺の言葉に、キミ子はしぶしぶ口を開いた。
「……さっき、緒方くんと話した」
やっと意を決して言ったその言葉は、今にも消え入りそうな、小さな声。
だけど、俺の耳にしっかりと聞こえた。
「……陸?」
聞こえたあいつの名前に、顔をしかめてしまう。
キミ子はコクリとうなずいた。
……やべー。なんかめっちゃムカつく。
ていうか、焦る。
なに陸と二人っきりになってんだよ。
学校おんなじで、いつでも会えるとこにいて、キミ子の視界に入ることができる陸が羨ましい。
俺は毎日ここに来ないと、キミ子に会えないのに。
陸に対するイラつきを抑えながら、今度はキミ子の肩を掴んだ。
「なんか言われたのか?」
こっちにキミ子を振り向かせ、落ち着きながらそう聞く。