「疲れた顔してるけど、大丈夫?」



吉田が心配そうに顔を覗き込んでくる。


最近まともに寝れてないからな。



「んー。平気」



でも、あいつの方がもっとずっと大変だったんだ。



こんなんでへこたれて、どうすんだよ。




俺は目を閉じて、夏と秋の季節の境目。


それでもまだ暑い季節の、この空を仰いだ。



「……あー、気持ちいーな」



風が俺の髪を揺らす。


目を閉じて思い浮かぶのは、ハム子の後ろ姿。



後ろの席から、ハム子の後ろ姿を見るたびに手を伸ばしそうになった。



ちょこちょこした髪に触れて。


そしたら文句言いつつ振り返って、


めっちゃ可愛い笑顔を見せてくれるんじゃないかって。


淡い期待を抱いて、手を伸ばしてみるけど…。



でも、ギリギリのところで、俺の手は止まるんだ。



そして思い出す。



〝お前が近づいたら、ハム子が傷つく〟



自分の頭が、俺の手に教えるんだ。