緒方くんと別れてから、1週間が過ぎようとしていたある日。
「今日は新学期ということで、席替えをするぞ〜」
学校で、熊田先生がそんなことを言った。
……席替え。
私は後ろの席を見る。
そこに緒方くんはいない。
おそらくどこかでサボってるんだろう。
……唯一近い距離でいられたこの席すら、変わってしまうなんて。
……私たちは離れていくばかりで、もう戻れないのかな?
ねぇ、緒方くん。
なんであの日、〝別れよう〟なんて言ったの……?
私を守るため?
私が傷つかないようにするため?
……襲われそうになったのは、確かに怖かったけど。
でも……緒方くんが隣にいないことの方が、もっとずっと辛いよ。
緒方くんの抱きしめる腕の力も、最後に落とした優しいキスも。
全て私の体は覚えてる。
あのときの緒方くんの苦しそうな優しい笑みは、私の胸をキュッと締め付けた。