「私は樹さんがいなきゃ意味ないけど……お店が残るだけマシか」

加絵さんは少し唇を尖らせ、不満げに口にしていた。

確かに、樹さん目的で来ていた人には役不足だけど……まぁ、そこは許してもらうしかないよね。

「そうだな……昼間は茜に必ずいてもらうようにして、俺もなるべく顔を出すようにするよ。定休日の夜は手伝う。なんだろう、急にうまくいきそうな気がしてきたよ。やっぱり、千穂ちゃんはスゴイね」

樹さんは満面の笑みを浮かべた。

「そ、そんな……どうなるかわかりませんけど。あ、いえ……もちろん頑張ります!」

不安を口にしつつ気合いを入れると、今度は吹き出して笑われた。

「うん、千穂ちゃんが頑張り屋なのは知ってる。本当に助かるよ。頼りにしてるからね」

樹さんの手が私の頭をポンポンと優しく撫でる。私は照れくさくなって、頬を熱くしながら俯いた。

「えー……なんかいい雰囲気。お邪魔虫は帰りますね」

加絵さんはまた唇を尖らせながら、店を出て行った。

「じゃあ、これからカフェについて、しっかり勉強していこうね」
「はい。よろしくお願いします!」

私は大きく頷いた。