「お待たせしました」




そう言って団子を差し出せば高身長の男は目を輝かせてかぶりつく。
隣の男も「いっただっきまーす!」と手を合わせてからかぶりついた。




「うめえ!!!!!」




「うん、美味しいね平助」




微笑みながら美味しいと言ってくれる、
その姿を見ていたら少し疲れが取れた気がした。

しかし相当見てしまっていたのか高身長の男がこちらに視線を向けてきた。




「あ、すみません!」




先程とうってかわって鋭い視線に思わず手にしていたお盆で顔を隠す。
お盆の向こう側で「脅すなよ、総司ー!」と言う声が聞こえてゆっくりお盆を下ろした。




「だってこの子が見てくるから、ね?」




「すみません、あまりにも美味しそうに食べてくださるのでつい....」




きっと今の私の顔は真っ赤だったり真っ青だったり変だろうなあと落ち込んでいれば、「そういえば」と声をかけられた。

お茶かな?と思い小首を傾げれば高身長の男は妖艶な笑みを浮かべた。




ドキリと心の臓が跳ねる。




「君、壬生浪士組って知ってる?」




何故そこでその話題なのか、
少し忘れていたことで和らげられていた私の気分はまた重くなった。




「はい....」




「その人達のこと、どう思う?」




「おい、総司」




「平助は黙ってて」




早くこの話を切り上げたかったので当たり障りのない答えを用意していたが、何やら只の世間話の雰囲気ではない。

隣の男の表情も幼さが抜けていた。




「君もここに働いてれば世間話くらいするでしょ?」




答えに詰まっていれば高身長の男が追い討ちをかけてくる。
私は思ったままのことを口にすることにした。




「....噂を聞いて、恐ろしいと思いました」




「うん」




思った通りの答えだったのか高身長の男は私と交わしていた視線を外す。
この答えが欲しかったのか?と思ったが続けた。




「でも....会ってみなければどのような方がいるかも分かりませんし、
頭ごなしに恐ろしい連中と決めつけることはできませんね」




いつの間にか完食された団子の皿を見つめて微笑めば、二人共大きく目を見開いた。
何やら難しい顔をして俯いてしまっている。




「あの....私何か変なこと言いました?」




恐る恐る問えば二人は顔を合わせて笑い出した。




「プッ....アハハハハッ!
だって、平助....頑張らなきゃだね~」




「ハハッ....その点ではお前が一番心配なんだけどな、総司」




意味深な発言をしたかと思えばおもむろに席を立ち、勘定を置く。
私は何がなんだか分からずに立ち尽くしていた。




そのまま二人は出ていこうとして、足を止める。クルリと振り返って、




「ごちそうさま!」




声を揃えて言い、店を出た。









思えば始まりはこの時だったのかもしれない。