ケータイ小説 野いちご

壬生狼の花











「その方達は....辻斬りか何かなのですか?」




声を震わせながら問えば、
大家さんは慌てて訂正してきた。




「違う違う!
彼らは会津藩預かりの非正規組織ってやつらしくてな、その地の治安を守る為に動くらしいんだ」




「....!
じゃあ、良い方達なのですね!」




私が安心したように顔を綻ばせれば大家さんは少し考え込むようにアゴに手を当てた。




「いや....そうも決めつけられねえんだ
なんせ壬生の狼なんていう二つ名だろ?
江戸にいた頃も結構暴れた事があったらしい

それに元町人、農民身分の浪士の集まりだ
何をしでかすか...」




暴れた事がある、なんて聞かされれば私の顔は青ざめた。
暴れる、と大家さんは気を利かせてくれたが実際はきっと多くの人を斬ったという事なのかもしれない。

そんな連中がこの京に来るのかと思うと少し気分が沈んだ。




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――――


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そんな重い気分は続き、もう店をしめる時間になってしまった。

笑顔を貼り付けていたが
甘味処の主人は気が付いていたようですぐ休むようにと言ってくれた。




お言葉に甘えたかったのは山々だったのだが、私は奉公の身、しっかりと仕事をこなした。

今日何度目かのため息をつきながら
店ののれんを外す。




そこに二人の男が駆けてきた。




「ああ~しまっちゃった~
これ、平助のせいだからね」




「ひっでえ!俺のせいかよ、総司!」




どうやらこの甘味処へ駆けてきた様で
私がのれんを外したのを見て肩を落としている。

ここら辺ではあまり見かけない顔なので旅人か何かと思い、まだブツブツ言い合っている二人に声をかけた。




「あの....よろしければどうぞ?」




そう言って店の中を指せば
高身長の男が目を見開いて驚く。




「いいの?!」




「二人分くらいなら残ってますので」




私よりも身長の高いのにその喜びようときたらまるで子供のようで思わず笑みをこぼす。

隣の男にもどうぞと言えば
「でももうしめたんじゃ....」と言葉を濁す。




しかし高身長の男は隣の男のことなどお構いなしに甘味処へと入っていった。




「ああもうあいつは!ごめんな!団子頼む」




「いいんですよ、」




はにかむように笑った男にも少し幼さを覚える。変な方々だなぁとクスクス笑いながら私も店の中へと歩を進めた。






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