あんな不倫をお遊びとしか考えないような奴に誰が彼女を渡すものか!!
二度も最愛の女性を失うのはもうこりごりだ。
そう実感すると、全身から力が湧き出るのを感じた。
ハンドルを握りしめている手はさらに力が入る。
「パパ……あっち……」
助手席に乗っていた祈が突然沈黙を破り、目の前に見えている巨大な倉庫を指さした。
目を細め、祈が指さす方向をジッと見つめると、倉庫を囲むフェンスには取り壊しについての張り紙が貼っているのが見える。
「祈、あそこは取り壊しが決定している貸出用の倉庫で、もう誰も通らないよ」
さすがにあそこでプロポーズはないだろう。
祈の言葉を否定するものの、祈は納得してはくれなかった。
「でも、あそこ!! あそこなの!! おねいちゃんがいるのっ!! はやくパパっ!!」
祈の言葉がとても真剣で、まるで美樹ちゃんの身に何が起きているのかを知っているような素振りだ。
「おねがいパパ!! はやくはやく!! はやくいって、まえなの!! パパっ!!」
祈の声は少しずつ悲鳴を帯び、ヒステリックになっていく。
その声を聞くと、とてつもなく恐ろしいことが起きているのではないかという思いが強くなっていく……。
目の前にある倉庫の背景の夕焼けの赤は次第に血の色に見えてくるのはなぜだろう。
とうとう、動かずにはいられなくなったぼくは大きな目からボロボロと涙を流しはじめる祈を横目でそっとうかがうと車を発進させ、取り壊しが決定している倉庫へと急いだ。
☆♪♪♪THREE☆ドロップEND☆