―…。
「お前、また遅刻かよ。」
「…悪い。」
やっぱり、あんだけ頑張っても1分遅れてしまった。
「お前、ほんと幸せ者だよなー。」
「は?」
急な展開に俺は頭がついていかない。
てっきり、また怒られるものだと思ってた。
なのに、「お前、ほんと幸せ者だよなー。」?
「心愛ちゃん。」
あぁ…。それか。
「彼氏フってまで、お前と付き合ったんだもんな。」
やっぱり心愛がフったのか…。
そりゃそうだよな。
あんだけ可愛い彼女をフる男がいるわけないよな。
「心愛ちゃん、言ってたよ。入試で緊張してる時、隣にいた男子が「頑張ろうね。」って言ってくれたんだって。それが…椿だったんだって。」
そういえば、あの時、緊張しすぎて、それをどうにかしようと隣にいた女の子に
「頑張ろうね。」
って言った気がする。
あの時、隣にいたの心愛だったんだ。
「だからね、同じクラスに椿がいて嬉しかったんだって。」
俺だって…正直嬉しかった。
まだ、あの時は曖昧な気持ちだったけど、たぶんあの時からすでに好きだったんだ。
「心愛ちゃんね、俺と話さなくなったでしょ?」
「あぁ。」
「あれね、心愛ちゃんなりの配慮なんだよ?」
…は?心愛なりの配慮…?
「俺と心愛ちゃんが、話してると、椿が浮かない顔しちゃうって。」
「…っ!」
「やっぱり勘違いされちゃうかもって。」
俺は心愛のことずっと見てて、よくわかってるつもりでいたけど、こんなことにも気づいてなかったんだ。
こんなにも俺のこと…
「じゃあ、そろそろ帰ろっかな。」
「は?」
「俺、このあと魁たちと遊ぶ予定だし。」
…この話するためだけに呼んだのかよ。
「じゃあな。」
「あぁ。」
心愛か…。
ふとケータイを見る。
メールが来ていた。
以心伝心ってこういうことかな。
『会いたいよ(>_<)今から会えるかな?』
心愛…
『今から行く。』
俺は駆け出した。