はっとして顔を上げると、そこには眉根を寄せて心配そうにあたしの顔を覗き込むグレーのスーツを身にまとった彼がいた。
その姿を見ただけで、ドクンと心臓が高鳴る。
そうすると、あらためて気づかされるあたしの感情に、またダメージをくらってしまう自分がいた。
「美樹ちゃん、顔色が悪いよ?」
「へ、平気です」
心配そうに見つめてくる潤さんがとても優しくて、あたしの心臓はドキドキしっぱなし。
おかげで心音にかき消されちゃうんじゃないかっていうくらい自分の声が聞こえない。
平気だとそう返事をしたのに、潤さんはやっぱり心配らしく、なおもあたしの顔を覗いてくる。
……顔が近いです。
目と鼻のすぐ先には彼の顔があって、あたしの顔が熱くなる。
おかげで今、あたしの顔は真っ赤になっているだろうことは鏡を見なくてもすぐにわかった。
「う~ん、でもね。ちょっとごめんね」
「ひゃっ!」
あたしに断りを入れた彼はあたしの方へと手を伸ばした。
びっくりしすぎておかしな声が出てしまった。
あたしのバカバカバカ!!
これじゃあものすごくおかしな子だ。
今まで触れられても何も感じなかったのに、今さら声を上げたら不審に思われちゃうじゃない!!
「あ、ごめん。ぼくはただ熱があるかたしかめたかっただけなんだ」
そんなあたしのおかしな仕草で、潤さんはすぐに手を引っ込め、謝ってくれる。