side:Miki Morimoto



「潤(ジュン)さん、これ、とうぞ」

玄関に立った彼の後ろで、あたしは青色の包みに入った四角いそれを両手に乗せて彼に向け、ずいっと突き出した。


青い包みの四角い『それ』っていうのはお弁当。

中身は冷えても美味しいよう、白ご飯には海苔と白ごまをふりかけ、おかずにはきんぴらごぼうと焼き魚の鮭を入れた。


これが最近の、あたしの仕事だ。

朝は日が昇る6時くらいから起きて朝食の用意をして、幼稚園に通う祈(イノリ)ちゃんのお弁当を作っている。


そして今日、彼が仕事から帰ってくるのは6時過ぎるらしい。

彼は仕事が忙しく、お昼ご飯もままならないらしい。

いつも合間を見つけてコンビニでご飯を買っているという。

だったら、と祈ちゃんのお弁当を作るついでもあって、ここ最近は彼にもお弁当を作っている。

……なんだけど。


今日は土曜日。

祈ちゃんの幼稚園はお休み。

だから当然、お弁当も必要ない。


それでもお弁当を作ってしまったのは、美味しかったとそう言ってくれた彼の言葉が嬉しかったからだ。

つい調子に乗って作ってしまったんだけれど……迷惑、だったかな。

手渡す今頃になってお弁当を作ったことに不安になったあたしは、恐る恐る彼の様子をうかがう。

すると……。


「え? また作ってくれたの? ありがとう」