元々運動も得意なおかげで、残った先輩達もとっとと殴り倒し、一発も殴られることなくその場をスタスタ去っていく。


ああいうはみ出し野郎共に絡まれるのは御免だ。俺は違う、仕方無く、同じことになっているだけ。


……なんて、いくら言い訳したところで、派手な見た目を辞めないでいる俺は、周りから見れば勉強が出来るか出来ないかくらいで然程あの先輩達と変わらない。


「おーい!恋夜!まーた喧嘩?」


殴ったせいで手の甲が赤くなった俺に遠慮無く声をかける主に、俺は足を止めて返事をする。


「喧嘩じゃなくてシメられかけて正当防衛しただけじゃね?」


「はは、良く言うよ。どうせ一方的にやったんだろ?」


この爽やかに笑うイケメンは、藤堂佳那汰(とうどう かなた)という、名前まで爽やかで出来た男だ。


ショートボブの黒髪に、フレームの太い黒縁眼鏡、水泳で鍛えている広い胸板が特徴的な、まぁ非の打ち所が無い男。


こんな見た目にプラスで、学年一位の頭脳を持ってんだ。まー勝ち目無いわな。