色々あった時から、一年半近く経った。


今、俺は鈴恵さんと共にいる。
やっぱり帰るべきとこはここなのだと、痛感する。


胸元で渋く光るネックレスも。
ケツポケットに佇む真っ青な携帯も。


何もかも変わらないのに。
あいつと過ごした短い季節が、また訪れる。

そんな時だった。


「じゃあ、今日はこれ買ってきたらいい?」


「ええ、お願い。
今日はドーナツ作る予定だから、伊織も早く帰るのよ?」


「はは、いいよ、俺甘いもの好きなわけじゃないし」


「ふふ、よろしくね」


「うん、わかった」


いつものように、俺は買い出しに行く。
駅前にはあまり行きたくない。


だから、自然と俺は遠くのスーパーまでバイクを走らせる。
頼まれたモノを買っていると、俺は思いがけない人に出会った。


「………伊織、か?」



スーパーで買い出しの食材を選んでいると、急に背後から俺の名前が降ってくる。
固まりながら、ゆっくりと後ろを振り返った。