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ザァッと風が吹いたのを合図に、はっとして前を向いた。


かなり久しぶりに来た京の風景が広がっている。


あぁ……まだ、昼か。


周りでは、カランコロンと下駄の音が鳴り響いて、たくさんの平屋が並んでいる。


賑やかだな、京は。


噂では、不逞の輩が頻繁に現れるようになった、と聞いたが……子供たちは、無邪気に走り回っている。


本当にそんなものいるのかと、疑うくらい。


……それにしても、大分長い時間、昔のことを思い出していた。


やはり京に来れば……いや、そうではなくとも、芳乃の顔が頭に浮かぶ。


今は、文久三年の末。


──芳乃が姿を消してから、十数年が経った。


山崎流は他の流派に破れた……つまり、俺の両親は死んだ。


その十数年の間に起きた、数々の出来事。


だが俺は、一度だって忘れたことはない。


芳乃のことを。