今出て行ったら、気まずい空気になるのは分かってる。
せっかく『ありがとう』って感謝されたのに、一瞬にして悪いイメージになってしまうことも分かってる。
……だけど。
俺はロールケーキを鞄の中に突っ込んで、足早に教室から出た。
すぐ近くに立っていた、岩崎と大西の顔は見ずに、階段を勢いよく駆け下りる。
大きく立てた椅子の音は、ふたりの会話を『うるさい』って言っているようで。
こうして不機嫌な態度は、きっと『感じ悪い』って思われただろう。
それでも、堪えきれなかった。
どうしようもなくムカついて。
その理由が分からないから、一層イライラして。
ぐるぐると心の中を、掻き混ぜられたような気持ちだった。