そんな生意気なことを言った俺に、目を真ん丸にしていた彼女だったけど、急にニッと笑うと掴んだ腕を引っ張った。

彼女の顔がまん前に来る。


「いいよ、いくら?」


女のつけてるフレグランスが、俺の鼻を掠る。


「……え」


まさか、そんな返答が来るだなんて思ってもなくて、素っ頓狂な声が出た。


まずい。
とにかく、いくらか言わないと…。


「……に、二万!」


汗が俺の顔を流れた。

拭うことも出来ず。


ただ、間近にあるその顔を見た。



ふっと嘲笑うように笑うと女は一言。

「やっすいのね」

そう、言いのけた。



「………………」


安かったのか。
二万って。


てか、知らねえし…。
そんな相場。

気恥ずかしくて、顔を背けると反対の手で俺の顎を掴む。

ぐいっと顔を強引に元に戻すと、女はにぃっと唇を上げた。



「いいね、気に入った。
今からうちに来ない?」


「………え」


「買ったの、貴方のこと」


「……………」


「ほら、おいで」


そう言うと、俺の手を握って前へと歩きだした。