「忘れ物はない?」


「ないない、あってもいらないよ」


「皆に挨拶した?」


「したした、ほら、これプレゼント貰った」


首にかけた折り紙で作った金のメダル。
その裏にメッセージ付きで。

「一生会えないわけじゃないし、またなんかあったら来るから」

俺がそうやって言うと、鈴恵さんは小さく息をついてから微笑んだ。

「そうね、ここでいつでも伊織を待ってるわ。
何かあったら遠慮なく、ここに来なさい」


「……うん」


その言葉が、胸に沁み込んで来て鼻がつーんとする。

最後ぐらい、笑顔でさよならしたい。
例え、一生の別れでなくても。


「あ、来たわよ」

くるっと振り返ると、あの写真の中にいた女の人が立っていた。

少しだけ、老けたのかもしれない。
だけど、やっぱり綺麗だ。


どうしたらいいのかわからずに、おろおろとしている。


その姿が頼りなくて、ふっと笑うと俺は鈴恵さんを真っ直ぐに見てあるモノを渡した。