やめて…。



「緒方くん、やめてっ!!」



そう叫んでも、私の声が届くことはなくて。







「なにしてる!!!おい、やめろ!!」



誰かが呼んだであろう、先生がやってきた。




「おい、緒方!やめろ!!」



何人かの先生に抑えられた緒方くんは、まだ男の人を睨んでいて。


睨まれた男の人は、ほとんど意識がなく、ぐったりしていた。



緒方くんの手には、少しだけ赤い血がにじんでいる。




……私のせいで、あの優しい手が傷ついたんだ。





「……緒方くっ……」



先生に連れて行かれる緒方くんに、声をかける。



緒方くんは、弱々しく笑った。



「お前のこと守りたかったのに、ごめんな。
もう、泣くなよ…」




なんで緒方くんが謝まるの?



1番傷つけたくない緒方くんが、なんで傷つかなきゃいけないの?



分からないまま、滲んでいく視界にうつる、緒方くんの背中を見つめることしかできなかった。