「二年前なら、龍は関係ないわ。だって、龍と知り合う前でしょう?」


あたしはこくりと小さくうなずく。


「あなたはある男と付き合っていた。名前は―――」



一ノ城さんが言いかけたそのとき。


―――ガシャンッ


そんな大きな音が聞こえて、みんな音のする方に目を向けた。


「っ……!遥斗君!!」


開いたドアから見えたのは遥斗君の姿だった。


「あーれー?二人だけの秘密の話って、言ってなかった?ここには、軽く五人以上はいるよねぇ」


遥斗君は辺りを見回しながら言う。


一ノ城さん達は、急に焦りだした。


「言い間違えただけよ。二人でも五人でもさほど変わらないでしょう?」


「もうわかってんだけど。いつまでしらばっくれるつもり?」


遥斗君の声はとても冷たかった。


遥斗君は一ノ城さん達のことを見向きもせず、あたしの腕を掴むと歩き出した。