「イロっつうのは、つまりキャストを自分に惚れさせてやめさせないようにすることだ」


「えっ?」


「実際、そうやって管理してるキャストはいる」


「………」


開いた口が塞がらなかった。
それって。
キャバ嬢が、お客さんにすることと同じ…?


「…まあ、そんなところだ」

俺の考えを読み取った店長は、情けなく眉を下げながら呟いた。

「女ってのはな、何かに依存しないと生きてけないんだろうな」


そう言いながら店長は二本目のマイルドセブンに火をつけた。


「タダで、とは言わねえよ。
給料は上げてやる。
でもな、好きでもねえ奴を抱けるか、そこなんだよ」


好きでもねえ奴を抱けるか。

そもそも、抱いたことも、キスをしたことすらない俺に…。
そんなことが出来るのだろうか。


給料が上がるのは、そりゃあ魅力的だった。

だけど。
不安で、どうしようもなかった。

そんな俺を見透かしてか、また店長がふっと煙を吐き出しながら笑った。