「あたし、あんたのこと好きになっちゃったかも。……うん、好きになっちゃった」
2年になったばかりの、いつかの放課後。
たまたまふたりになった教室で、突然言われた言葉を忘れない。
相手は、大西。
当然、初めは嘘だと思った。
こいつ、何ふざけたこと言ってんだ……と、眉を寄せた。
何故なら、大西に好かれるようなことは、何ひとつしていない。
むしろ、俺がしていたのは、嫌われるようなことばかり。
……あ、その腹いせか。
告って、騙して、『好きなわけないじゃん!』って、たぶんそういうパターン。
「俺は」
そんな言葉に引っかかるほど、馬鹿じゃないからって、返事しようとした。
だけど、
「あっ、えっと!今のは自分の気持ちの確認っていうか!」
慌てた様子で大西は後ずさりして。
「うん、まぁそういうことなんで!」
と、自分の言いたいことだけを言って、大西は教室から出て行った。