ハッとして顔を上げた。
凪くんに知られてしまった.......
一番知られたくなかったことを......
凪くんに......
「お父さんなんか、大嫌い.......
大っ嫌い!!!」
私は凪くんの手を離して、廊下を走り出し、
お父さんの横を素通りして、校舎を飛び出した。
もうおしまいだ......
高校も、
凪くんも、
全部、またお父さんのせい........
どうしていつも、私の嫌がることばかりするんだろう。
校門を抜けて、土手を走って、
走って走って、泣きながら走って、
悔しくて、恥ずかしくて、
知られたくなくて......
いろんな涙を流しながら、家へと走った。
【くるみちゃんのお父さんておじいちゃんみたい】
【くるみちゃんのお父さんってなんかきったない】
【貧乏! 貧乏! 貧乏!】
小学校の頃、いじめられた言葉たちを思い出して、
耳から離れない。
家に帰り、自分の部屋の引き戸を閉めて、
畳の上に泣き崩れた。
また、軽蔑される。
また白い眼で見られる。
もう、おしまいだ......
ぽたぽたと畳の上に涙が落ちてしみこんでいく。
凪くんにだけは、
知られたくなかった.......
好きになってくれなくてもいい、
ただ、
ただ、嫌われたくなかった.......