「何があったかわからないけど、演じてるんならイライラすることないじゃん!」


ぶっきらぼうに私は伊織に言うと、氷が溶けきって薄まったジュースを飲んだ。


「…なんか、お前モテなさそうだな」


「はっ?!」


「………オバチャンみたいに小言うっせー」


「お、おば?!」



まだ16ですけど!?
ピチピチの女子高生ですけど!?


拳を思い切り握り締めてワナワナしてると、伊織は大きな溜め息を一回ついた。


「…わり、今回の客しつこくてさ」


思い切りキレてやろうとしてたのに、素直に謝られて、拍子抜けしてしまった。
この怒りどこにぶつけたらいいんだ。
伊織にはもう、ぶつけらんないじゃないか。


「女が他にいるだの、私を好きじゃないだの、うるさいんだわ」


「……」


「好きじゃねーし、彼女でもねーしって、お前客だったんだな、忘れてた。
ごめん、今の忘れて」


「客を好きになったことないの?」


今日見た女の人は綺麗だった。
伊織の隣にいても引けを取らないぐらい。


そんな彼女を好きにならないのだろうか。

ていうか、そんな彼女しか伊織と似合わないようにも思えるけど。