ドンッ!
「わっ……!」
ちょうど一階へと、足を付けて。
角を曲がろうとした、その瞬間。
階段を上がるため向かってきた人と、正面からぶつかった。
「ごめん!……って、大西さん?」
よろけながら、呼ばれた名前に顔を上げる。すると、
「えっ!? どうしたっ!?」
血相を変え、肩を掴んできた人。
それは……中村くんだった。
心配そうに、あたしの顔を覗き込む。
理由はたぶん、すごくひどい顔をしちゃってるから。
だけど、泣き顔がブサイクだって知っていても、ポタポタと頬を伝って落ちる涙を止められない。
むしろ『どうした?』って言葉に、勢いは増して。
「っ、うっ……」
あたしは泣きながら、中村くんの腕のシャツをギュッと掴んだ。
そして……。
「あたしと、付き合ってっ」
しゃくりあげながら、必死に声を出した。
「フリ、とかじゃなくてっ。本当にあたしと付き合って!」