やっぱり、私が棺桶に入るまで降りてくるつもりはなさそうだ。


辺りを見渡せば亀裂ばかり……。


もう少しで世界が崩れそうなくらいにヒビ割れたこの空間。


でも、完全に壊す事はできなかった。


「皆、しばらくの間サヨナラだね……ごめんね、今日『呪い』を解く事ができなくて」


もう、こうなってしまったら、他に手段はない。


ゆっくりと棺桶に近づき、その中に足を入れようとした時……私の腕を誰かがつかんだ。


足を下ろし、振り返って見てみると、翔太が今にも泣き出しそうな表情を浮かべて私を見つめていた。


「美雪……俺、まだお前に言ってない事があるんだ」


そんな顔で私を見ないでよ……決心が鈍るじゃない。


「翔太、ごめんね。私が目覚めたら……聞かせて」


そう呟いて、私は翔太の手を引き離して棺桶に入った。


ここからは私の役目だから、もしも失敗しても、皆にはもうこんな思いはさせないから安心してね。


そんな事を考えながら、私は棺桶の中に横になり、眠気に任せるままに目を閉じた。