凪さんは少し首を傾げて私の顔を覗き込んだ。
いいの......かな.......
ぐーにしていた手をそっと開くと、
凪さんがその手のひらに飴をのせた。
「ありがとうございます」
私が軽く頭を下げると、凪さんが手を離した。
「勉強、頑張れ」
ベンチの背にもたれて、長い足を投げ出して座って、
にこにこ笑っている凪さん。
「はい」
なんだか恥ずかしくて、
どうしようもなくドキドキしてしまって、
飴をぎゅっと握りしめると、
川の土手までダッシュしてしまった。
高い土手に立って、川を見渡した。
大きな川
そこに続く緑
青い空
大きな白い雲
いつもと同じ風景が、全然違って見えた。
いつまでも胸の鼓動がおさまらないのは、
ダッシュしたせいじゃない。
凪さんのかわいい笑顔を思い出すたびに、
ドキドキする。
もっとその笑顔を見ていたかった。
また、会えるだろうか......
私は飴の棒を持って見つめた。
また、会いたい......
そう祈りながら、土手を家の方へと歩き出した。