私は前屈みになり、売り場のお姉さんに近づく。
周りに聞こえないように慎重に話しかけた。


「…実はあの人私の彼氏なんです」


「…………」


口を開けっぱにして驚きながらも、事情を察してくれたのか、(まあ、全て嘘なんだが)チケットを一枚差し出した。


「……1500円です」


お金を支払って、軽くお礼をすると私は館内に急いだ。




よくあの人信じてくれたなあ。
そう考えながら、ちらりとチケットに視線を落とす。


…………



まさかの私と貴方の科学反応。
こんな映画…彼の趣味っぽくないけど。


…………って、何勝手に伊織を作ってるんだか。



多分、レンタル彼氏はこういうことなのかもしれない。


理想に当てはまらなきゃいけないのかもしれない。






それって苦しくないのだろうか。