「千愛実ちゃん、俺ら今から友達とカラオケ行くんだよ。一緒にくる?」



俺の代わりに隣にいた愁季が説明する。



つーか、そんなこと言ったら付いてくるだろ。


そう思っていたけど。



「あ……そうなんだ。じゃあ、私帰るね」



あっさりと身を引いたコイツに、少し驚いた。


「南波は?愁季くんといく?」

「ううん。千愛実が行かないんなら、私も行かない」



それから千愛実は、俺に満面の笑みで手を振って帰って行った。



「千愛実ちゃんて、いい子だよなー」


不意に、愁季がボソッと言った。


「は?」


いい子?どこがだよ。


「本当は龍牙と一緒にいたいんだろうけど、いつも自分が邪魔になると思ったらついて来ないし」



……確かに。



放課後、こうやって来て、ついてくるのは俺に何も用事がない時だった。


用事がなくても、一人になりたいと言った時も、アイツはついてこなかった。



そういう気を使えるところは、いいところだとは思う。