絶対に振り返るな。


絶対に振り返るな。


絶対に振り返るな。






その言葉だけを信じて、事務室のドアの前まで後退して、その場に崩れるように腰を下ろした時だった。












『「赤い人」が、東棟一階に現れました。皆さん気を付けてください』










そんな校内放送が流れて、私の背後から、無邪気な笑い声が聞こえた。






「キャハハハハハハッ!」





私は……振り返ってないのに……。


何度も校内放送が流れるなんて聞いてないよ。


伊勢も留美子も殺された。


だったら……もうどうでもいい。


ゆっくりと振り返った私は、「赤い人」の笑顔を見た。









「ねぇ……赤いのちょうだい」








あぁ、二見は、トイレで振り返ったから殺されたんだ。


ひとつだけ、納得した瞬間……「赤い人」の手が私の顔に迫り、目の前が真っ暗になって、私は思考を停止した。