空said






始業式が終わり、さっきまで静かだった体育館に騒がしさが戻る。
あたし、葉月空は憂鬱な気分のまま、校門の外へ出た。

高校二年生になっても、学校はあまり好きではない。
勉強は嫌いだ。

ふと後ろから地響きと、嫌な予感(殺気)を感じ、振り向くと…

優「空ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」
空「ぐふぉッ!!……」


突然の衝撃に、魂が一瞬飛びかけた。
というか、なんか天使が見えたよ。

急な衝撃の正体は、あたしの先輩である高校三年生の師走優。
とても頼りない天然であるが故に、あたしは度々被害を受ける。


優「空ちゃん!?なんか白目になってるよ!?……ごめんね…俺が不甲斐ないばっかりに…。俺、空ちゃんの分まで生きるから…」


勝手に死んだことにされてるよ。あたし。


空「先輩。まだあたし生きて──」


優「ハッ!!い、今、空ちゃんの声がッ!!ごめんね!!俺を呪わないで!!成仏してェェェェ!!!!」

空「成仏もなにも死んでませんし。先輩。」

優「え………?空ちゃん!?良かった!!俺は信じてたよ!!空ちゃんがまだ死んでないって!!」

空「呪ってあげましょうか。」

優「……そういえばね!!」

空「話そらしたよ。…それで、なんですか。」

優「今日は空ちゃんにお願いがあってね。実は────」



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空「───バイト…ですか?」

優「そう!!一週間だけでいいんだ。ちょっと手が足りなくて……」

空「一週間……。いいですよ。」

優「ほんとに!?じゃあ、今から行こう!!みんなに紹介しなきゃ!!」

空「い、今からって!!ちょっ…」

強引に手を引かれ、走り出す優先輩のあとを追いかけた。

その日から、
楽しくて、辛くて、
切なくて、面白くて、
大好きな日々が始まることを
あたしはまだ、知らなかった。