廊下をのそのそと歩いている笹倉を発見した亜子は、目をキラリンと光らせてダッシュした。


「笹倉せんせっ!」

「んあ? …って、廊下走んなアホが」


バシンッと出会って早々に頭を教科書で叩かれた彼女は頭を両手で押さえて涙目になる。

それはそうだ。なんせ無遠慮に思いっきり叩かれたのだから。


(…痛い。でもこれはチャンスかも)


にやり、と俯き笑みを浮かべた亜子はバッと顔を上げ、彼をムッとした表情で見やった。


「……先生、いきなり叩くなんてひどい。おこなの?」

「…」


バシンッッ、先程よりもいい音を出してまた頭を叩かれた亜子はあまりの痛さにうずくまる。


「っ、うぅ、頭が…割れる」

「お前石頭だから問題ねぇだろ」

「そういう問題じゃないっ!」


(石頭だとか関係ない。痛いもんは痛いのーっ!)


不意にすりすりと自分の頭を撫でていて思った。


「…あたしハゲないかな」

「ハゲるかもな」

「そんなしれっと言わないでよっ!ハゲたら先生のせいなんだからねっ!」

「違うな。叩かれるようなことをしてるお前が悪い」

「くっ…!」


正論すぎて言葉が出ない亜子に勝ち誇った笑みを浮かべる笹倉。

因みに、あれ、似たようなやりとり見たことあるぞ、というツッコミはスルーさせていただく。