緩やかにカーブを描いている短髪は、
ごく自然に後ろへ撫でつけられ、

皺のないシャツに品の良いネクタイを当てて、

ちゃんとしたお仕事なんだろう。


いま流行りの、ヘビ顏。
私好み。
ああ、涼しいお顏。


刷り込み中の鳥の雛みたいに、
目をパチクリ。
遠慮なく、彼を見つめる私。






「大丈夫ですか?」


「はい…」

彼は、
きっと冷たい人ではないはずだ。

むしろ、いい人!


もし、この人が、
私の話を信じてくれる人だったら…


私、もう少し
この人と話がしたい!


「あの」

「あ、救急車来たみたいだ、
君、あんまりしゃべらないで、
頭も上げないほうがいい」

「こっちらです!この人です!」
ちょいど、利用客の一人が救急隊を連れて駆け寄ってきた。

「今、意識が戻ったんです」
「そうですか、念のため、
病院で診てもらいます?」

「いえ、大丈夫です」
私は慌てて言ったが、
私の以外、全員一致で、
その方がいい、と話し、私はそのまま
救急車に乗せられた。


ああ。


私の王子様…。