「―――由・・・季・・・?」


わずかに人の気配がする。

誰かがあたしの名前を呼んでいた。


声の方に向こうとするのに、頭が動かなかった。

ゆっくりとその方向へ目だけを移動する。


(お・・・母さん・・・?)


見慣れた顔がはっとするようにあたしをのぞきこんでいた。


「由希!? 由希、気づいたのね!?」


「先生・・・!」と叫びながら、母親が視界から消え、足音が遠のいていく。


かわりに視界に飛びこんできたのは、加奈の顔だった。