コンビニまでの50メートル、宏人に五回も「馬鹿」と言われた。

背中を叩きながら歩く夜道は、蒸し暑い風がどこからか夏草の匂いを運んできて、

遠くに光る赤いタワーが、ビルの上からあたしたちを見ていた。


この先また、宏人を疑ってしまうようなことがあるんだろうか。

そしてあたしも宏人に疑われたりするんだろうか。

勘違いから、ヤキモチから、不安から。


楽しいだけじゃない、そんなスパイスも恋には付きものなのだと知った、10代最後の夏の夜だった。