皆が食事中に、俺は3升のお米を洗って釜にしかけていく作業をしていた。
3升炊きの釜は、全部で3つ。
その全てにお米を洗ってしかけたら、漸く俺も食事だ。
と言っても、既にほとんどおかずは残っていなかったので、仕方無くお茶漬けにして、胃の中に流し込んだら、直ぐに次の仕事が待っていた。
兎に角、野菜の下ごしらえや海老の殻剥き、玉ねぎや生姜の皮剥きの合間に掃除と皿洗いと残飯処理がやって来る。
それが終われば、昼のオーダーが矢継ぎ早に厨房に入ってくる。
1品5~600円の商品が11時~2時迄の間にどんどん出て、ランチタイムの3時間で30万円台を叩き出すのだから、最低でも500品は作っている計算になる。
忙しくて当たり前だが、マジでしんどかった。
ランチタイムが終われば、従業員の昼飯だ。
毎日、炊き場長がメニューを決めて、必要な材料を俺が用意していくのだ。
この賄いの時が、唯一包丁を握らせて貰えるチャンスでもある。
それ以外では、ショウガの皮剥きや玉ねぎの皮剥きの時にペティナイフを使うくらいで、それを除けば包丁を持つチャンスなんて無い。
職人さん達が食事中に、俺は前半の営業で出た生ゴミをビルの外まで捨てに行き、それが終わればランチタイムの時の山の様な洗い物と格闘だ。
パートのおばちゃんが食事休憩から戻ってきたら、交替してやっと昼飯にありつける。
が、ここでもまた朝飯と同じく殆どおかずらしきものは残っていない。
唯一、飲み放題の味噌汁が俺の賄いの95%を占めていると言っても過言ではない。
ご飯に味噌汁をぶっかけて、5分程で昼飯タイムの終了である。
ここから職人さん達は、夕方5時まで休憩タイムである。
その時間を利用して、俺は後半戦の為に米を研いだり野菜の下ごしらえ、魚の骨抜きや塩漬けクラゲを細く切っていったり、燕の巣を掃除したり豚足の毛を焼いていったりと、毎日遣ることは山の様にある。
その日の昼のノルマをこなし終わる頃、職人さん達は休憩から帰ってくるのだ。
後半戦は、宴会の予約客が殆どである。
たまに飛び込みで予約なしのお客様も見えるときがある。
例えば、七天半 五人 参万五千円 と、予約が入れば、7:30 5人 35,000円と言う意味で、よっぽどの指定が無ければ1人 7,000円なら何を出すか決まっているのだ。
まずは 前菜を出した後、排翅(パイチゥー)と言う大ぶりのフカヒレの姿煮が出るのだ。
これが、1人の客単価がもう少し安ければ魚翅(ユウチゥー)と言う小ぶりのむなびれ辺りのが出て、もっと客単価が低ければ散翅(サンチゥー)と言うフカヒレを下ごしらえするときにバラバラにほぐれた部分、要するにフカヒレのクズ部分のスープを出すのだ。
そのフカヒレの下ごしらえって言うのが本当に大変な俺の様な下っぱの見習いがやる仕事なんだ。