商店街の中、目的地のカラオケボックスが見えて来る。快に会えない寂しさを紛らわす為だと言えばそれまでだったが、それでもいい。瀬奈は勢いよく店のドアを開け、中へ入った。



【明日の夜、部活が終わった後、会いに行ってもいい?】

 菖蒲とのカラオケを終えた帰り道、瀬奈が思い切ってそう快にメールを打つと、珍しく快から返事がきた。

【待ってる。】

 快らしい、短い言葉での返信だったが、久し振りに快の顔が見れると判り、瀬奈は思わず笑顔になった。

 携帯電話を閉じ、足を弾ませながら、ただ眠る為だけにあの"嫌い"な家へと戻る。が、その数時間後の真夜中、眠る彼女の携帯電話が静かに光りを放ち、快からのメール着信を知らせた――。



【ごめん、一人がいいから。】

 朝、快からのそのメールを見た瀬奈は、思わず床にへたりこんだ。

「快……っ」

 "幼馴染み"として長い時間を共に過ごし、積み木を積むように、一つずつ思い出を重ね、たくさん知って判っていたはずの快が、白い霧に包まれ、遠ざかってゆく。

 ――快が……判らないよ……!!

 瀬奈は携帯電話を握り締め、声を殺しベッドに突っ伏した。やがて、その肩が小刻みに震え、微かに嗚咽が漏れた。