「おー、彼女ね。
……彼女だったっけ?
んー、まあ、彼女だな」
おとぼけ調子の拓。
おいおいおいおいおいおい!!
なんだそりゃ!
彼女じゃなかったら私は何なんだコラ!?
グツグツグツグツ、腸が煮えくり返る。
「あ、ちょうどよかった、たっさん、飯食いました?
僕らまだなんで、一緒しません?」
「あー、残念、私ら、たべ…「おー、いーよー」
被せる!?
被せてまで!?
てか私らさっき、牛丼食べたじゃん!
あんた、汁だく大盛食べておいてまだ食べる気なの!?
……ああ、そうだ。
紅がいるからなんだ。
紅が一緒だから。
そう思ってチラリと紅に視線をやると、紅がこちらを見ている。
何か言いたそう?
あれ、鼻で笑ってる?
て言うか、何か感じ悪い?
見下されてるのかな。
紅がオシャレでかわいいから?
私がおばさんでオシャレじゃないから?
頭の中が、変な気持ちでぐちゃぐちゃになる。
「オレら牛丼食ったからー、コーヒーも飲めるとこにするべー」
私のぐちゃぐちゃなんかお構いなしに、筆を大量に買い込んだ拓は上機嫌だ。
カツオくんと肩なんか組んじゃってる。
ばかばかばか。
今日はデートなんだから。
久しぶりのデートなんだから。
私だけを見なさいよ。
言葉にならない不満が、私の中に蟠る。