十一時を少し過ぎた頃、予定の時間通り清香さんがやってきた。


その手に、最近人気のケーキ屋さんの箱を携えて。


「これ、食後に食べようと思って。菜都さん、甘いのは好き?」

「はいっ、大好きです!! それにここのケーキ、一度食べてみたかったんです」


清香さんからケーキの箱を受け取ると、それを大事に冷蔵庫へとしまう。


「菜都、良かったな」


龍之介の声に振り向くと、ポンッと頭を撫でられた。


「龍之介さんでもそういうことするのね。意外だわ」

「放っとけ」


清香さんの言葉に照れたように顔を赤らめた龍之介を見て、こっちまで照れてしまう。


赤くなったであろう顔を見られないようにキッチンの奥に入ると、昼食の用意を始めた。


「清香さん、今日はカルボナーラにしたんですけど大丈夫ですか?」

「えぇ、大好物よ。菜都さんが作ってくれるの?」

「は、はい。料理得意じゃないんですけど、今日は頑張って作りますね」


“料理は見た目より愛情だ”


なんて、どこかの料理家が言っていたような気がする。


ちょっと時間は掛かるけど、丁寧に心を込めて……。


そうして出来上がったカルボナーラは、思った以上に上出来で。


清香さんも龍之介も、喜んで食べてくれた。


「菜都、やれば出来るじゃないか。これからは毎日頼むな」


そう言って頭を優しくポンポンされたけれど、毎日はちょっと。


でもいつの日か私が龍之介の奥さんになる日が来たら……。


ちょっと頑張ってみようかな。


そんなまだ決まってもいない、未来を夢見たりして。