「だから、兎に角、親の手前、俺たちは付き合っていて、しかも結婚の約束をしているってことにするんだ。っで実際はもちろん違うんだけど、取敢えず、そのまま暫く付き合う。そうだなぁーーーー例えば半年?いや、3ヶ月でもいいや。お試しってやつ?」


「お試しぃ?」


「そう、お試し。」


「具体的にどう言った……。」


そうだよ、具体的に言って貰わなきゃ、


そのぉ、恋人としてってことはさ……
なんていうか……ねっ?


あんなことや……
こんなことや……
そんなことぉーーー


「お前さ、頭ん中で思ってる事、顔に100パー出すの止めろよ。」


「で、出てました?」


「うん、出てた。」


「スイマセン……。」


「まぁ、気になるわな。お前、何せこれまで一度も付き合った事ねぇんだしな。だから、逆にさ、これはチャンスだ。きっと、お前の為にもなると思うんだ。」


「私の為?」


「そっ、考えて見ろよ。一から相手探して、知り合って、それでそっから好きになっても付き合えるかどーかも
わかんねえじゃん?お前、出会いとかあんの?」


うっ、痛いところをついてくる。


「ない、です……。」


「だろうな。だからこそ、今回、試しで付き合ってだな、恋愛の疑似体験するわけよ。普通のカップルがやりそうなことをさ。もちろん、お前が気にしてる事は無理にはやらねぇよ。俺だってそんなにがっついてねぇし。ナニの相手には困ってねぇし。」


ナ、ナニって……。


「悪い話じゃねぇと思うんだ。兎に角、俺は見合いを断れるし お前にしたって、疑似体験することで恋愛スキル間違いなくアップだ。しかも相手はこんな良い男だぜ。なんなら、饅頭も好きなだけ食わせてやる。なっ?お互いに利害関係成立じゃね?」


お、お、お饅頭がっ、好きなだけ?


そ、それは惹かれる。


でもなぁ…、


何か上手く丸め込まれてってる気がするんだよねぇ……。


第一、こんな良い男って自分で言う?まぁ、確かに良い男だけど……。


「決断できねぇ?」


運転席から不意に
顔を覗き込まれーーーー


ち、ち、近いっ!


「わわわかりましたっ。だから、離れて離れてっ。しっしっ。」


「ったく、俺は犬かよ。」


と、ブツクサ言いながら、私から離れる和菓子職人、サトルさん。


「兎に角、お話は大体、分かりました。 だけど、少し考えさせてください。」


「ダメだ。待てない。俺は待つのがーーー」


「嫌なんでしょ?」


「分かってんなら、いいだろ?この話、決まりってことで。どうせ、他に相手もなくて、饅頭ばっか食ってんだし。」


「ひどいっ!饅頭ばっかって何なんですか!チョコもケーキも食べてますっ!」


結局、何だかんだと、言いながらも丸め込まれる形となったんだよね。


はぁ……、
大丈夫なのかなぁ、私。