ガチャーーー


「あっごめん。まだ準備中だったね。」


と、会議室に入ってきたのはーーー


「坂下さん。」


坂下 俊也(さかした しゅんや)さんは私たちより2年先輩で、営業部にいる。仕事もバリバリ出来て、おまけに社内でも有名な爽やか系のイケメンで、スラッとした体型に全体に薄目の色素が柔らかい印象を与える。


綺麗な二重の目は薄茶色で確かお母さんがイギリスと日本のハーフだったような……。


とまぁ、兎に角、モテるのだ。


「すいません!もう準備終わりましたから、どうぞ。さっ、行くよ、胡桃(くるみ)」


急いで会議室を後にしようとしたら


「ごめん、村崎さん。ちょっといいかな?」


と、坂下さん。


「えっ?私?」


「どーぞ、どーぞ、こんなんでよけりゃ、いくらでもどーぞ!」


私が戸惑ってるうちに香澄は言うと会議室を後にした。


私の耳元で「後で詳しく聞くからね」と、言って……。


坂下さんと二人きりになった会議室。


なんだか、気まずい。


「あのぉ……、坂下さん、どうかしましたか?」


黙っている坂下さんに聞いてみた。


「そのさ……急にごめんね。しかもこんな場所で。迷ったんだけど今がチャンスかなって」


ん?なんの話?


急に?今がチャンス。


ああっ!


「はい!大丈夫ですよ。私、全然オッケイです!」


「ほんとに?いや、こんな話が早く進むなんて……信じられないよ。」


急に綺麗な瞳を更にキラキラと輝かせて坂下さんが言った。


「心配しないで信じてください!私、ちゃんと坂下さんの想い受け止めましたから。」


「村崎さん……。僕、嬉しいよ。」


と、今度は熱い視線で私を見つめてくる坂下さん。


「そんなぁ、私こう見えても結構、感がいいんですよ!こう言ったことは早い方が良いですよね?私、早速、伝えてきます。」


「えっ……。伝え、る?って誰に?」


「もう~、照れなくて良いじゃないですか?ああっ、しまった。そう言えば、この前合コンいって新しい彼が出来たんだった!参ったなぁ……。いや、でも坂下さんだったら余裕で大丈夫ですよ!それに、少々、恋には障害があった方が盛り上がるっ!」


「ち、ち、違う、違うよ。村崎さん!」


「ダメですよ!坂下さんなら大丈夫。自信を持ってください!もっと攻めなきゃ!兎に角、私に任せてくださいっ。」


って、急いで会議室を後にしたんだよね。


後ろで、


「僕が好きなのは春川さんじゃないから~!」


って、坂下さんが叫んでいるのも知らずに……。