「仕事…、なくなっちゃう。」


「あいつの仕事なんか、いらないでしょう。」


「しゃあねえなあ。

一人寝が寂しい時とかさ、身も心も痺れるような夜をお望みなら、俺に任せて。」


キラキラした瞳で私を覗き込む翔平君に、思わず吹き出してしまった。


「僕はそういったことは出来ないけれど、そばにいてあげてもいいですよ?

あ、店の中、限定です。」


上から目線のくせに、やけに穏やかな表情のダイキ君に、私はそっと頭を預ける。


「…ありがとう。」


もう、泣き過ぎて化粧もボロボロ。

目は腫れて、頬も真っ赤で。

だけど、自分の気持ちにしっかりと整理がついたような気がした。


顔が見れて、良かった。

玲の幸せそうな、顔。

航太の元気そうな、顔。

あのままだと、私は永遠に空虚なループに捕らわれていたかもしれない。


「ね、二人とも、ありがとう。」


私は俯いたまま、呟く。


「いいっすよ。打ち上げで返してもらえれば。」


「あ、俺、北京ダックが食いたい。」


「もう。小さな花屋なのに。

大口の契約も…無くなるのに。」


そっと顔を上げると、二人の優しい眼差しにまた泣きそうになる。

必死に笑おうとするけれど、涙が溢れてしまって、情けない顔になってしまう。

そんな泣き笑いのような顔を、二人はニコニコしながら見守ってくれていた。