彼の名前は遠野亮(とおのりょう)。

 緋色のとなりの家に住む幼なじみで、
 紫杏学園高校の二年生。


 緋色が慕っているただ一人の人。



 緋色が見ているのは亮さんだけ。

 小さい頃から変わらない。



 振り向き、亮さんの姿を認めると、
 緋色の表情が見る間に変わる。

 きらきらと輝くような満面の笑顔に。
 弾むような声に。


「お兄ちゃん」



 緋色は全身に恋しさを滲ませながら、


 まっすぐに――――

 彼のもとへと駆け出していく。