「それだけ。

偶然って計算されてても、いいかなって思ったの。」


「綾子――??」


「元気かどうか、自分で確かめたら??」


――――!!


動揺する私に、追い打ちをかけるように綾子は続ける。


「玲は梨花と一緒に受付に立つわ。

役者は揃ったのよ。

自分にケジメ、つけるなら、今日しかないと思うわ。」


「綾子…。」


「私は麻友理に前を向いてほしいだけ。

過去に縛られてたって、仕方ないのよ。

麻友理、逃げてるでしょう?

ちゃんと目を見開いて、前を向いてごらんなさいよ。

あんなの、どこにでもある話なんだよ。」


「で、でもっ―――。」


「麻友理はね、きっと大丈夫。

ちゃんと、麻友理のことを見てくれる人が現れる。

だって、麻友理はいい子、だもん。

私が、保証する。

誰にだって、失敗はあるんだよ?

だから、もう、…自分を傷つけないで。」


―――――!!


「…ごめん、もう、行くね…。」


いたたまれない空気が重く圧し掛かり、私は逃げるように立ち去った。


自分を傷つけないで―――。

ダイキ君にしろ、綾子にしろ―――。


「…麻友理、さん??」


「どうしたんすか…?」


浮足立って綾子のもとへ行った私。

戻ってきた私は、余りにも悲壮感がたっぷりで。

困惑する私を、ダイキ君も翔平君も不思議そうな顔をして見ていた。